せいちょうつう【成長痛 Growing Pain】
2~6歳の子どもで、日中は元気よく遊んでいるのに、夜寝ているとき、急に脚(あし)が痛いといって目を覚まし、泣いたりしますが、痛みは長く続かず、さすってやったり、だっこしたりすると治り、また寝てしまう状態をいいます。
脚にけがや炎症はなく、翌日には何事もなく跳びはねているという特徴があります。
月に1~3回の割合でおこり、1~2年くらい続くことが多いものです。
脚の急激な成長の過程に多くみられるので、いわゆる成長痛と呼ばれています。しかし、成長は子どもにとってあたりまえのことですから、成長そのものが直接の痛みの原因とは考えられません。もし、成長するための痛みであるなら、すべての子どもが痛みを訴えるはずです。
したがって、成長痛という名称は、原因不明の子どもの脚の痛みをいうのに便利な一般用語であっても、医学的には適当な名称ではありません。
いわゆる「成長痛」の多くは、日中に運動した後の、単なる脚の疲労感を、まだ十分にことばで表現できない幼・小児が、もっとも表現しやすい「痛み」ということばを使って訴えているものと考えられます。
夜に訴えることが多いのは、昼間とちがい、就寝時や睡眠中には子どもの心の抑制がとれ、「痛み」を訴えやすい時間帯になるからでしょう。
また、家庭や学校を含めた生活環境の変化や、心理的ストレスによる、心や睡眠の軽い障害が、「痛み」として表現されたとも考えられます。
たとえば次子の誕生、入園・入学などの集団生活の開始、過度の運動などがそれにあたるでしょう。
また、この脚の痛みを訴える子どもたちは、全身の関節がゆるい(関節弛緩(かんせつしかん))ことが多く、そのため運動が負担になっていると思われます。
医師は、病気による痛みではなく、また、脚の形が悪くないことを確認したうえで、子どもが痛がっても、過度に心配しなくてよいことを両親によく説明します。
痛みの原因が、悪い病気ではないことを両親が理解し、ゆったりと子どもに接するようになれば、子どもも安心し、痛みで不安になるようなことはなくなります。
薬は使わずに、痛む場所をさすったり、温めたり、あるいはだっこすると痛みは消えることが多いものです。
どうしても痛みが続き、心理的要因が大きいと判断された場合は、専門医の心理カウンセリングを受けることも考えます。