今回最終講演にして一番身近な傷害になる『肉離れ』でこんなにも気付かさえるとは・・・
◆教育講演 7:肉離れの病態と治療 11月8日(日) 第3会場 14:50 〜 16:20
座長:中田 研(大阪大学大学院 医学系研究科 健康スポーツ科学(スポーツ医学))
2-3-IL7-1 肉離れの病態と治療 99
国立スポーツ科学センター メディカルセンター 奥脇 透
全くの勉強不足だと気付かされることがあった。
それは、、、『肉離れの分類』があるということです。
肉離れの分類(奥脇分類)
I型:筋腱移行部に出血所見のみが認められる出血型
患者は筋が動いたと言う事が多い
II型:筋腱移行部、とくに腱膜の損傷が明らかな腱膜損傷型
バリっと音がしたと言う
III型:筋腱付着部損傷型(剥離や断裂が起こる)
稀だがアキレス腱断裂のようにぶつけられたような音がする
それぞれのタイプの予後は、
I型がストレッチ痛がなく1~2週でスポーツが可能となり日常生活にも問題ない
II型では復帰に1~3カ月(MRIで腱膜が肥厚し完全修復が確認できないと再受傷する)を要するが、患者自身は3週間ほどで筋力テストもメディカルチェックもパフォーマンスチェックも合格して復帰してしまい復帰したその日に再受傷するケースが非常に多く復帰の指標はMRIで行う
III型は手術的治療を検討しなければならなくなり数ヶ月以上の治療期間が必要となる
また、患者が肉離れしたみたいと来院する90%は肉離れをしており残りは筋肉痛である
受傷部位はハムストリングが4割(長頭56%、半膜様筋32%で近位の近位か遠位の遠位に8割発生する)で下腿三頭筋が14%、四頭筋が10%となる
初診は受傷直後ほど重要で受傷後時間が経ち出血斑が現れるとコンパートメントが起こり圧痛位置が変化してしまい診断が難しくなる
この後お話される仁賀先生もjリーグのチームドクター時代に復帰時期を選手から聞かれれて非常に困っていたが、奥脇先生の分類のおかげで2008年以降は復帰時期についてしっかりと選手に伝えられるとのことです
2-3-IL7-2 肉離れの病態の評価に基づいた治療について 〜手術的治療を中心に〜 100
JIN整形外科スポーツクリニック 仁賀 定雄
肉離れは再受傷しやすい怪我で、メディカルチェックやパフォーマンスチェックが合格でも3~4週間で復帰すると必ず再受傷していたが、2008年の奥脇先生の分類発表で復帰の指標が出来たそうです。
仁賀先生は現在開業しMRIをすぐに使えるようになって驚いたことが多く、小学生の水泳選手に上腕骨の疲労骨折や多発性疲労骨折が起こっていたり、9歳ミニバスの選手が大腿骨の疲労骨折になっていたなど考えられない怪我を子どもたちがしている。
ミニバスの子に聞くとシュートを外すたびに体育館を一周走っていたそうで毎回100週は走っていたそうです。
ここで話を肉離れに戻します。仁賀先生のクリニックにはグロインペイン症候群の患者が多く訪れます。
グロインペイン症候群はよくわからない事が多くありますがMRIをすぐに使用できることで様々なことが判りグロインペイン症候群と思い受診した患者の多くに腸腰筋の肉離れが認められた。
なぜ今まで判らなかったというと腸腰筋の肉離れは受傷6週間でグレード0になりMRIに映らなくなってしまうがグロインペイン症候群で訪れる患者を大学病院でMRIを撮るには2・3週間後に予約を取り撮すために発見できなかったことになります。
多くのSucker選手を調べたところロングキックの練習をして腸腰筋の肉離れを起こしますが、それ以外でも坂道ダッシュや階段ダッシュや腹筋運動(一般的な)でも腸腰筋が肉離れする。
また、患者に心当たりを聞いても受傷機転があると答えたものは2割しかおらず。
いつなったものか本人が自覚しにくいのも悩まされる。
身体所見としてクロスモーションが上手く機能していないことが肉離れの原因でもあり理想的な骨盤と胸郭を含めたキネティックチェーンの獲得が求められるということでした。